2022年10月17日,災害科学国際研究所にて,本講座の第1期報告会を行いました.
当講座は当初,2019年11月から2022年10月までの3年間の予定で発足しましたが,更に3年間の延長が決定しました.
設置当初より内陸活断層地震による地震被害の予測と被害軽減のための基礎的研究としていくつかの主要なテーマに取り組んできました.
主なテーマとしては,①活断層および強震動等と建物被害分布の関係性の解明,②内陸活断層近傍と対象とした断層変位および強震動の予測手法の開発,③事前予測を想定した断層近傍の地質・地盤の解明の3つが挙げられます.
これらの3年間の成果と今後の計画について,10月17日に応用地質株式会社の成田社長,五十嵐副社長をはじめ役員の方々をお迎えし報告会を行いました.
第1期の成果について簡単に紹介します.
テーマ① 2016年熊本地震による構造物被害に関する文献をレビューし被害の要因になり得るものについて取りまとめた.他機関との連携を通じて提供された建物被害率データの再解析により,建物被害率と断層,地質・地盤情報との関係について考察した.その結果,断層近傍における建物被害率の高い地域は断層端部および断層形状が複雑化する地域に集中していることが明らかになった.
テーマ② 熊本地震では従来の予測モデルでは再現できない断層近傍の大きな強震動が発生した.断層浅部の構造を取り込んだモデルを検討することにより,断層近傍の強震動を再現を試みた.特に,東北大学の研究グループにより調査された浅部の地形・地質データをモデルに採用することにより,構造物被害に結びつく地表の大変形をともなう強震動を再現した.これらの研究から断層浅部の地質構造を考慮した詳細な断層モデルを用いた強震動予測を提案した.
仙台市内を横切る主要な活断層である長町-利府線断層帯による自身の特徴の解明と予測モデルの高度化のため,独自の調査を実施している.仙台市周辺の地形データおよびボーリングコアの解析,微動観測を地位自他断層帯の詳細な分布や変形,地盤の特徴,断層帯を横切る反射法地震探査の実施による浅部,深部構造の解明を進めている.
これら,第1期の成果について,今後は新たなデータや知見を用いたアップデートを行い,変位および強震動の予測モデルの想定方法の検討および断層分布や地形,地質をふまえた構造物被害予測の検討をすすめていく予定です.
それに伴い,現在,熊本地震の断層周辺における新たな調査を実施しており,更なる調査データの蓄積を行っていく予定です.